• このエントリーをはてなブックマークに追加
  • RSS
VRの360°を知る総合メディア
banner
ホームコラム【GDCレポート】祝祭から定着へ。『GDC 2017』に見るVRコンテンツ事情
コラム
2017/03/15 14:30

【GDCレポート】祝祭から定着へ。『GDC 2017』に見るVRコンテンツ事情

米サンフランシスコで毎年3月に開催されるゲーム開発者会議【GDC】(Game Developers Conference)が、今年も2月27日から3月3日まで5日間にわたって開催された。VRで盛り上がった昨年のGDCだったが、主要VRヘッドマウントディスプレイ(HMD)の発売が出そろった今年は、昨年とは様相が異なっていた。

01
△会期中は全世界から2万3,000人のゲーム開発者が集まる

02
△『FINAL FANTASY XV』など有名タイトルのポストモータム(ふり返り講演)も実施

03
△ミドルウェアやツールなどが展示されるエキスポも魅力のひとつ

一見すると期待外れと思いきや……

VR体験コーナー「GDC VR Lounge」や、VR/AR専門の開発者会議「VRDC」の新設、VR HMDの試作機などが登場。会期にあわせてソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)がPSVRのプレスカンファレンスを開催し、価格と発売日も発表するなど、さながら「VR祭り」の様相を呈していた昨年のGDC。運営が混乱気味だったVRDCもご愛敬という感じで、主要VR HMDの発売を控え、会場には祝祭感が漂っていた。

GDC 2016
04
△ウエストホールに新設された「GDC VR Lounge」では多くのHTC Viveゲームが並んだ

05
△ウエストホールのロビースペースには多彩なVR関連ゲームが登場

06
△PC一体型の次世代VR HMD試作機なども登場

GDC 2017
07
△昨年VR関連ゲームやVR HMDの試作機が並んだスペースはがらんとしていた

では、そこから1年開けて、今年のGDCはどうだったのだろうか。一見すると去年ほどの盛り上がりは乏しかったように見える。ブースごとに長い行列が生まれた「GDC VR Lounge」はなくなり、VRDCも早々にパスが完売したにもかかわらず、多くのセッションで空席が目立っていた。VR HMDの新製品も乏しく、一部参加者からは、ことVR/ARに関しては期待外れの声も聞かれた。

もっとも、状況を子細に見ていくと、少し違った見方が出てきそうだ。まずGDCが開催されるモスコーニセンターは、「ウエスト」「ノース」「サウス」という3つの会場にわかれている。このうち昨年のVRDCが行われたのはウエストホールで、初日のセッションは約500名が収容できる教室ふたつで行われた。あまりの混雑ぶりに、2日目は待機列が長くとれるノースホールに教室を移動させたほどだ。

しかし、今年は初日からVRDCの会場がノースホールとなり、約1,300人が収容できる最大規模の教室ふたつを使って開催された。1,000名だった収容者数が一気に2,600人に増えたのだ。それでも人気VRゲーム『Job Simulator』のセッションは、ひとつの教室が8割方埋まる人気ぶりを見せた。また教室前の廊下にはウエストホールから移る形でVR関連のデバイス出展が並び、ベンチャーやスタートアップの健在ぶりを示していた。

08
△約1,000名もの聴講者を集めた『Job Simulator』のセッション

また、GDC開催直前にSIEからPSVRの全世界販売台数が約92万台という公式発表が行われた。もっとも需要に対して供給がまったく追いついていないことは、SIE幹部も認めるところだ。SIEワールドワイドスタジオ・プレジデントの吉田修平氏は筆者の取材に対して「発売後すぐに増産体制の整備を進めたが、短期での増産が難しく、お客様にはご迷惑をおかけしている」として、できるだけ早く適正在庫につとめたいと述べた。

VRDCでは大型タイトルのメイキングセッションが充実

こうした状況からもわかるとおり、昨年と今年とではGDCにおけるVRの位置づけが大きく変わってしまったように感じられた。昨年までの「物珍しさ」がなくなり、今年は「存在して当たり前のもの」になっていたのだ。そのため議論の内容も技術動向をはじめ、より地に足がついた内容に移っている印象を受けた。またエキスポ会場ではハプティクス(触覚)をはじめ、新しいVR関連製品のデモが見られた。

VR開発者コミュニティにとって最大級のニュースとなったのは、VR職業体験シミュレーター『Job Simulator』の売上が300万ドル(約3億円)に上ったということだろう。会期中に開催されたユニティ・テクノロジーズのカンファレンスで、開発元であるOwlchemy Labsのメンバーがあかした。インディゲーム開発者によるVRタイトルとしては最大級の売上で、全世界にロールモデルを示した形だ。

08_09
△Unityのカンファレンスに登壇したOwlchemy Labs

『Job Simulator』の物語演出について議論する「Spatial Storytelling Lessons from ‘Job Simulator’ and ‘Rick and Morty VR’」は、前述の通りVRDCでも最も人気を博したもののひとつとなった。VRゲームでは映画とも、既存のゲームとも異なるストーリーテリングが求められる。セッションではこれを「ユーザードリブンストーリーテリング」と銘打ち、ユーザーを追い立てることなく、自然に導くためのノウハウが共有された。

09
△プレイヤーに自発的に行動を促すための仕掛けを大量に用意する

VRゲームではグラフィックと同様に3Dオーディオも重要だ。この分野ではPSVRで昨年末に配信された『Star Wars バトルフロント ローグ・ワン: Xウイング VRミッション』のサウンドデザインに関する講演が詳しかった。コクピットを精密に作り上げ、視線誘導などで計器類を操作可能にするとともに、プレイヤーの頭部の向きにあわせてエンジン音などを変化。プレイヤーの没入感をそらさないためのテクニックがあかされた。

10
△コクピット内の雰囲気をサウンドで演出

ほかに筆者は聴講できなかったが、世界的に大ヒットしたARゲーム『ポケモンGO!』や、大鷲となってパリ上空を飛び回るUBIの『イーグルフライト』、『塊魂』を手がけた高橋慶太氏が、GoogleのARプラットフォーム「Project Tango」向けに開発したゲーム『Woorld』などのメイキングセッションが行われた。また余談だがマイクロソフトのMRデバイス、HoloLensを装着した参加者が早くも見られたのが印象的だった。

教室前ではさまざまな周辺器機のデモが行われていた。中でも興味を惹いたのは、ロシアのFinch VRが発表したモバイルVR向けモーションコントローラー「Shift」の次世代バージョンだ。二の腕に巻いたセンサーバンドだけで、カメラを必要とせずに両腕の動きを感知できる。実際に試したところ、ある程度の遅延は発生するものの、充分に実用範囲だと感じた。こうしたデバイスが普及すると、モバイルVR系にまた新たな勢いが出てくるだろう。

11
△モバイルVRにモーションコントローラーを提供する「shift」

12
△すでに発売中のDK1にかわって、より洗練された次世代バージョンが登場

VR/ARを盛り上げる協賛セッション

VRDCだけでなく、GDCのメインセッションでもさまざまなVR/ARの技術講演が行われた。中でも英ARMがエピックゲームズとOculus VRとの3社で行った協賛セッション「High Quality Mobile VR with Unreal Engine and Oculus」は興味深いものだった。セッション内でエピックゲームズが、UnrealEngine 4のVRに関する技術アップデートの一環として、Foveated Renderingの対応について語ったのだ。

Foveated Renderingはユーザーの注視点付近を高解像度、周囲は低解像度でレンダリングする技術で、これによりGPUの処理負荷の低減が期待されている。実装にはVR HMD側でアイトラッキング技術のサポートが必要だが、すでに国産VR HMDのFOVEで実装されており、次世代VR HMDで標準搭載が期待されている。エピックゲームズでは「デバイスの対応に応じて実装を進める」と述べるに留めたが、今後の展開が期待できそうだ。

13
△次世代HMDの中核技術として期待されるFoveated Rendering

マイクロソフトはHoloLensのSDK(開発者向けキット)に関する協賛セッションを行った。市場に出荷されたばかりとあって、こちらも300名規模の教室が開発者であふれ、注目度の高さを感じさせた。興味深かったのは複数台のHoloLensでキャプチャしたルーム情報を互いに共有できる点だ。本体価格が約33万円と高価で、エンタープライズ用途での導入が先行するとみられるが、ゲーム用途にも含みが感じられた。

14
△HoloLensの技術講演が早くもGDCで登場

ほかにHTCが協賛セッションで、Viveでスマッシュヒットを飛ばした開発者のパネルディスカッションを開催し、30分という短い時間にもかかわらず、300名教室が一杯になっていた。VR/AR市場が本格的に立ち上がる中で、次第にディベロッパー間で勝ち負けが出始めており、他の成功体験を知りたいというニーズが感じられた。こうした点からもGDCにおけるVR/ARの扱いが第2ステージに入っていることがうかがえた。

エキスポでは周辺器機やソリューションが人気

エキスポ会場ではGoogleのモバイルVR HMD「Daydream View」の試遊出展などが見られたが、総じてVR HMDの試作機は控えめだった。かわりに増加したのがVR HMDの周辺器機や、VRを活用したソリューションだ。中でも注目株は触覚(ハプティクス)で、おりしも会期中に任天堂からニンテンドースイッチが発売されたこともあり、ユニークなデバイスが出展されていた。

中でもおもしろかったのが、コンテンツにあわせて温風を吹き出す「Vortx」(WHIRLWIND VR)だ。ヒーターとファンが入ったボックスで、PCとUSBで接続する。特筆すべきはデバイス側がPC上で実行しているゲームの状況を自動的に見知し、それにあわせて送風をコントロールする点で、ゲーム以外に動画再生にも対応する。昨年に続けての出展で、今年はいよいよ一般ユーザー向けに、サイズを半分にしたものを販売するという。

15
△フライトシミュレーターなどに最適なVortex

光学式モーションキャプチャーシステム「OptiTrack」(OptiTrack)と、VRアリーナ向けガンコントローラー「Striker VR」(Striker VR)を組み合わせた、VRアリーナ「OptiTrack Active」の体験スペースも注目を集めていた。プレイヤーはバックパック型PCとVR HMDを装着し、ガンコントローラーの引き金を引くとリアルな銃撃音と振動で銃撃戦が楽しめる。アリーナは最大30メートル四方まで拡大でき、最大25人まで同時に楽しめる。

16
△VR空間内でリアルな銃撃戦を演出するOptiTrack Active

ポイントはOptiTrackの最新システムをキャプチャに使用している点だ。VR HMDとStriker VRには、それぞれ6~8個の赤外線LEDマーカーが内蔵されており、空間上の位置をアリーナの周囲に取り囲むように設置された受光部(カメラ)でトラッキングする。同様の仕組みは東京・お台場で稼働中の『ゼロレイテンシー』でもみられるが、後発だけあって、よりトラッキング精度が高い印象を受けた。

その他の展示
17
△Google Daydreamの実機が展示

18
△VRゲーム向けフットコントローラー「SprintR VR」

また、オリジナルのコントローラーを用いた自作ゲームを展示する「ALT.CTRL.GDC」も盛況だった。数年前からエキスポの名物コーナーになっており、今年は優れたインディゲームを顕彰する「IGF (Independent Game Festival)」でも部門賞が設置されるなど、さらなる盛り上がりを見せていた。こちらも触覚は人気テーマで、多彩なゲームが展示されていた。これらは高い確率で将来、VR HMDと融合していくと思われる。

19
△バネ型コントローラーで自然な触覚を表現する『Shape Fitter』

20
△ターンテーブル形コントローラーをDJのように指で回しながらプレイする『vinlOS』

21
△ゾンビとなって布きれを手前に引っ張りながら匍匐前進する『Zombie Crawler』

より完成度が高まるインディのVRゲーム

インディゲームが集まる「GDC Play」コーナーでも、数々のVRゲームが見られた。特筆すべきはVRだけに留まらず、ゲームとしてもボリューム感があり、完成度の高いものが増えていたことだ。韓国ILLION Interactive Entertainmentの『Preta : Vendetta Rising』は、VR/非VRの両展開をめざす無双系3Dアクションゲーム。PSVR、Oculus Rift、PC(非VR)、モバイルゲームで今秋リリースを予定している。

22

△Preta : Vendetta Rising

『MARS COLONY』はスイスの個人ゲーム開発者、ZUGSOFTの最新作。アニメ『バトルテック』風のロボットを操って戦うMMOFPSで、HTC Vive、Oculus Rift、モバイル、Windows、Mac向けに開発が進んでいる。プラットフォームをまたいでの対戦プレイにも対応しており、一度にプレイできるのは100~300人程度。オープンβでは3日間で1万人の登録ユーザーを集めた。リリースは今春を予定している。

23

△MARS COLONEY

その他のVRゲーム展示
24

△魔法使いとなって敵を撃退するVRアクションゲーム「Eye of Odin」

25

△先史時代を探検する『Time Machine VR』

26
△カーネギーメロン大学によるHoloLensと楽器演奏を組み合わせたデモ

このようにローンチ前の祝祭感から一転して、第2ステージに進みつつあるGDC 2017でのVR模様。ここで紹介できたのは全体でもほんの一部に過ぎず、まだまだ多くのタイトルやデバイスが展示されていた。また、会場外でもさまざまな商談やイベントが行われていたとされる。PSVRの品薄感を見ても、まだまだ全世界的に市場の広がりが期待でき、それと共にさらなるVR体験が進化していく。そのように実感できたGDC 2017だった。

■関連サイト
GDC(Game Developers Conference)

この記事を書いた人
小野憲史(おの・けんじ)

小野憲史(おの・けんじ)

1971年生まれ。関西大学社会学部卒。「ゲーム批評」編集長などを経て2000年よりフリーのゲームジャーナリスト。国内外のゲームイベント取材、インタビュー、レビュー、コラム、講演、特別講師などを務める。主な編著に「ゲームクリエイターが知るべき97のこと(2)」など。NPO法人IGDA日本名誉理事・事務局長。
VRveatをシェアしよう
Back to Top