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ホームコラム【メルボルン国際ゲームウィーク】映像博物館でのVR体験イベントとゲーム開発者会議にみるVRの盛り上がり
コラム
2016/11/25 13:46

【メルボルン国際ゲームウィーク】映像博物館でのVR体験イベントとゲーム開発者会議にみるVRの盛り上がり

オーストラリア第二の都市、メルボルンで実施されたVRコンテンツ関連のレポート最終回。
今回はacmi(Australian Centre for the Moving Image、オーストラリア映像博物館)で開催されたVR体験イベント【ゲームチェンジャー:ACMI VRフェスティバル】の様子からレポートする。ゲーム開発者会議のGCAP(Game Connect Asia Pacific)と、ゲーム見本市のPAX AUSの中日にあたる11月3日に開催され、平日の木曜日にもかかわらず多くの来場者でにぎわっていた。

acmiは1946年に設立されたビクトリア州立映像センター(State Film Center of Victoria)を前身に持つ州立の施設で、2002年にリニューアルして現在の形になった。最大の特徴は芸術・映像・デジタル文化を並列に扱っていることで、テレビ・映画・ゲームの展示が充実しており、ゲームクリエイターによる講演会やゲームプログラミングのワークショップなども開催しているという。2012年には『セガラリー』『Rez』などを手がけた水口哲也氏も登壇した。なお、このときの映像は公式サイトから全編を視聴できる。

Game MasterAn Evening with Tetsuya Mizuguchi [Full]

こうした背景があって、今回のVR体験イベントが実施されることになった。施設は年間125万人が訪れる人気スポットで、イベントも半日で5,000人の集客を見込んだという。館内はHTC Viveを中心にデモが並び、社会見学で来館した小中学生の姿も見られた。また展示とともに地元のゲーム開発者や研究者によるパネルディスカッションも開催。イベントに先立ち、11月1日にはゲーム開発者教育について議論する「ゲーム教育サミット」も開催。教育関係者を中心に200人が参加したという。

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△メルボルンの中心部、フェデレーションスクエア内に位置するacmi。

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△入場口前のロビーで、早速HTC Viveのデモが行われていた。

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△常設展と企画展のふたつにわかれて、合計7エリア、16コンテンツを展示。

新旧様々なゲームを展示

もっとも、acmiは館内を見てまわるだけで楽しく、ゲーマーならずとも一度は訪れたい施設になっていた。そこでVRコンテンツを紹介する前に、ざっと写真で紹介しよう。常設展はオーストラリアの映像文化の歴史を、大きくテレビ・映画・ゲームの順に紹介していく形式になっており、特にレトロゲームの充実ぶりが目を引いた。なお、ゲームのコレクションと展示を行っている施設はオーストラリアでもacmiだけだという。

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△入り口の目の前にあるアーケードゲームコーナー。エミュレーターによる展示だが、実際に遊べるのは嬉しい。

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△『PONG』と並んでATARI VCS版『スペースインベーダー』を展示。

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△『スペースインベーダー』、『ミサイルコマンド』を展示。

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△ゲームだけでなく、チラシや当時のニュース映像なども紹介している。

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△『トゥームレイダー』の主人公ララ・クロフトの造形物とともに2Dから3Dへと時代を追って代表作を展示。

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△ニンテンドー64を夢中で遊んでいる子供。

Beam Softwareはメルボルンで1977年に設立された最初期のゲーム会社で、ファミコン(NES)の公式ライセンスを受けた海外で2番目の企業になったとされる(第1号は英レア)。初期の名作『The Hobbit』はテキスト主体だった当時、早くもカラーグラフィックを用いたアドベンチャーゲームで、イギリスのゲーム市場を席巻した。その後、同社は変遷を繰り返し、現在もKrome Studios Melbourneとして活動を継続している。そんな地元企業の功績を称えて、同社の作品を展示するコーナーもあった。

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△2002年にPS2でリリースされた『Ty the Tasmanian Tiger』の試遊台とフィギュア、開発者インタビューの映像が展示されていた。

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△『Ty the Tasmanian Tiger』開発に際して作成されたイラストボードや設定資料など。

ゲームの歴史を辿るレトロゲームコーナーとは別に、オーストラリアのインディゲームや最新ゲームを紹介するコーナーも設けられていた。中でも目立っていたのが『Minecraft』で、多くの子供たちが集まっていた。

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△『Minecraft』はXbox 360版を展示。

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△『FIFA』などのAAAゲームから地元オーストラリアのインディゲームまでさまざまな試遊台を設置。

テレビ・映画関連の展示も充実。豪州映画の代名詞ともいえる、あの作品も!

もちろんゲームだけでなく、それ以上のスペースを取ってテレビや映画関係の展示も行われていた。オーストラリアは近年、ハリウッドの大作映画のロケ地誘致を積極的に行っており、これまで『マトリックス』、『ミッション・インポッシブル2』、『スーパーマン リターンズ』など数々の実績がある。
また、『パイレーツ・オブ・カリビアン5(仮題)』の誘致にも成功しており、100億円以上の経済効果が期待されている。こうした文脈から、展示も映画に関する内容が充実していた。

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△カメラなどの機材、映像作品に加えて、俳優なども紹介。

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△初期のテレビカメラなどを紹介するコーナー。

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△アニメーションの制作で実際に使用された撮影台。

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△ポータブル化されていくビデオカメラの数々。

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△オーストラリアでロケされた映画を紹介。

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△日本でも大ヒットした『クロコダイルダンディー』。

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△最新作も大ヒット。豪州映画の代名詞ともいえる『マッドマックス』。

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△当時の撮影スナップや資料も展示。

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△フルCG映画の幕開けとなった『トイ・ストーリー』。

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△オーストラリア先住民のアボリジニに関する映像・写真記録も展示。

子供からお年寄りまで多くの来館者が楽しんだVRコンテンツ

こうした文脈をもとに開催された【ゲームチェンジャー:ACMI VRフェスティバル】。ストアでリリース済みの人気タイトルに加えて、地元企業が開発中の最新デモや、歴史的な建造物をVRで体験するなどの、意欲的な展示もみられた。オーストラリアの大学と産学連携で開発されたコンテンツがあったのも印象的だった。

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△宇宙飛行士となって国際宇宙ステーションの船外活動を体験する『EARTH LIGHT』。地元メルボルンのOpaque Media GroupとNASAが共同開発中のタイトルだ。

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△メルボルンの歴史的建造物のひとつ、Coop’s Shot Towerが舞台の『Melbourne Central’s Shot Tower Experience』。1890年代の木造建築の塔の中で、鉛を溶かして散弾銃の弾を作る作業が体験できる。

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△CGと実写映像が融合したアドベンチャーゲーム『VR Noir: A Day Before The Night』。プロトタイプ版がSTART VRとオーストラリア・映像・テレビ・ラジオスクールとの共同開発でGear VR向けに製作された。公式サイトからダウンロードできる。https://startvr.co/project/vr-noir/

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△HTC ViveによるTiltBrushのデモ。

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△60代の夫婦で、VR体験はこれが初めてだと語っていた。Gear VRを皮切りに、多くのHTC Viveによるデモを楽しんでいた。

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△外側からはまったく想像がつかないが、『Everest VR』でエベレストの頂上を目指して一歩ずつ歩いているところだ。

今回のイベントで驚かされたのが、多くの子供たちがVRコンテンツを体験していた点だ。
日本ではOculus VRやソニー・インタラクティブエンタテインメントの規定を遵守し、13歳未満の年少者は原則体験できないことが多い。斜視の原因になるとされるからだ。
しかし今回のイベントではコンテンツを厳選すること、保護者や成人の監督下で体験させることなどを条件に、特に年齢制限を設けなかったという。

実際、数分間のVR体験で人体に悪影響が出るとは考えにくい。それよりも博物館のような公共スペースで実施する場合、若年層を含むより多くの年齢層にVRを体験してもらい、未来を感じてもらうことの方が重要だろうという運営側の判断は、理に適っているように感じられた。こうした姿勢は日本でも学ぶ点が大きいのではないだろうか。

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△社会見学で訪れた小学生が『Melbourne Central’s Shot Tower Experience』を体験。

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△引率教師の指導の下、小さな子供たちもVRを体験。

イベントを主導したのはacmiの公共教育部門長をつとめるヘレン・シモンソンさんと、チーフエクスペリエンスオフィサーのセバスチャン・チャンさんだ。Acmiではゲームのインタラクティブ性について「映画のVFXと同じで、体験者(視聴者)を映像によりのめり込ませるための手段」だと捉えており、ゲームも映画も変わりはないという。その上で「VRによって従来の映像文化が大きな変化を遂げようとしていることを、今回のイベントで広く感じて欲しかった」と語った。

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△ヘレン・シモンソンさん(左)とセバスチャン・チャンさん(右)。

VRゲーム開発について熱心な議論が行われたGCAP

最後に11月1日と2日に開催されたゲーム開発者会議GCAPについても紹介しよう。メルボルンをはじめ、オーストラリア全域とニュージーランドから約500名の参加者を集めて開催された。今年のテーマは「巨人の肩に乗る」で、開幕基調講演では『アサシンクリード』シリーズなどでゲームシナリオを担当し、現在は米Certain Affinityでナラティブディレクターをつとめるコレイ・メイ氏がつとめた。メイ氏は先人達の知見にいかに助けられてきたか、事例を紹介した。

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△オーストラリアとニュージーランドの開発者で埋まった基調講演会場。

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△『クロッシーロード』のパブリッシュで一躍有名になったYodo Gamesなどがブースを出展。

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△地元の大学生によるインディゲームのデモ展示も見られた。

VRゲームについての技術講演も何本か見られた。中でも興味深かったのは、国際宇宙ステーションでの船外活動を題材とした『EARTH LIGHT』のプロデューサーによる講演「Tethered to Space – Designing Games in VR(宇宙に繋がれる~VRのゲームデザイン) 」だ。講師はメガドライブ向けゲーム開発からスタートしたというエムル・デニス氏。メルボルンのOpaque Media Groupに所属し、NASAと共同開発を続けている。

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△Opaque Media Groupで『EARTH LIGHT』のプロデューサー兼リードゲームデザイナーをつとめるエムル・デニス氏。

筆者もacmiのイベントで本作を体験できた。国際宇宙ステーションの外壁にあるユニットの不調を調査することがミッションで、音声での指示に従ってエアロックから船外に移動し、バーを掴みながら目的地に移動していく。Unreal Engine 4で描かれた船体と、宇宙から眺める地球は非常に美しく、いつまでも留まっていたいと思うほど。その一方でバーが水平の場合は問題ないが、斜めのバーを掴むと体は水平のままなのに、視界だけ回転するため、少しVR酔いが感じられた。

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やがて目的地近くに到達すると、キラキラと雪のような結晶が流れてきた。あるユニットから何かが漏れており、宇宙空間で急速に冷却されて結晶化しているようだ。思わずユニットに手を伸ばしたところ、突然ユニットが爆発して宇宙空間に放り出されてしまった。命綱もつけておらず、もはや帰還することもままならない。その一方で地球は相変わらず美しかった……。というところでデモは終了した。

もっとも、これは当初からデザインされていた展開だったようだ。デニス氏はデモを制作する上で「作用・アフォーダンス・信頼性」の確保が重要だったと解説。「プレイヤーが両手をつかって取り得る行動は無数にあり、これをいかに特定の動作に自然に導いていくかが重要だった」と補足した。斜めのバーをいかに自然に掴ませるかについても、何度も試行錯誤を繰り返したという。

その上で今回のデモは移動に特化したものだったが、現在は電動工具を用いた、より具体的な「作業」に焦点をおいてデモを制作しているとコメント。「誰も触ったことのない工具を、どのように自然に使わせるか」苦心していると述べた。また、テストプレイヤーから「現実に即した作業だけでは飽きやすい」と声が上がったとして、いかに個々のミッションや行為をゲーム全体のデザインの中で位置づけていくかが重要だとした。

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△実際の船外活動で使われる電動工具。

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△EARTH LIGHTのゲームサイクルとそれに付随する要素。

ちなみにデニス氏によると、無重力下での移動は歩行を伴わないため、HTC Viveのルームスケール機能は使用しない前提で開発しているという。そのためOculus RiftやPS VRへの移植についても、前向きに検討したいと語っていた。宇宙飛行士の船外活動は多くの人にとって憧れであり、非常にVR向きの題材だ。ぜひ完成したら体験したいと思わせる内容だった。

また、Virtual Firefilesのマーク・シュラム氏は、講演「Please Stop Making People Sick! Lessons Learned During 5 Years of VR Development(どうか人々を気持ち悪くさせないでほしい。5年間にわたるVR開発で学んだ知見)」で、既存のVRゲームにおける移動メカニズムをひと通り体系化し、各々のメリット・デメリットを解説した。シュラム氏によると「コンテンツに最適な移動方法を選択すると、VR酔いの多くを軽減できる」という。

実際、VR空間でいかに快適に移動させるかは、多くのVR開発者にとって課題となっている。その中からワープ方法や、体を使った移動(『EARTH LIGHT』の捕まり移動もそのひとつだ)など、さまざまな解決方法が模索されてきた。自らB2B向けのVRゲーム開発もつとめるというシュラム氏の講演は現状のまとめとして最適で、こうした知見がいち早く共有される点にGCAPの強みを感じさせた。

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△Virtual Firefilesのマーク・シュラム氏。

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△講演はビデオを多用したもので、講演自体をビデオで公開したいと語っていた。GDCなどで再度聴講を期待したい。

最後にMagic Leapのゲームデザイナーによるふたつの講演が行われたことを追記しておきたい。同社はこれまで公式発表は何もないものの、画期的なMRデバイスを開発しており、Googleなどから推定14億ドル以上もの資金調達を行っていることで注目されている企業だ。これまでに「体育館で鯨がブリーチング(巨大なジャンプ)をしている映像」などが公開されており、謎が謎を呼んでいる。

Magic Leapの話題の映像
https://www.magicleap.com/#/home

手がかりのひとつが本年2月に発表された、Magic LeapとWeta Wrokshopの業務提携だ。WetaWorkshopはニュージーランドのVFXスタジオで、『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズの制作で一躍有名になった。同社のホームページではWeta Wrokshopのインタラクティブ部門がMagic Leapのエンジニアと協業し、現実のオフィス内で宇宙人や戦車と戦うFPS『Dr. Grordbort’s Invaders』を開発中だとしている。

http://wetaworkshop.com/news/latest/magic-leap-01/

講演ではジェームズ・エベット氏が「Building Trust as a Game Designer(ゲームデザイナーとしての信頼を構築する)」、ジミー・バイアード氏が「Borrowed Toys and Broken Dreams(玩具から拝借し夢を壊す)」と題して講演した。いずれもゲームデザイナーとしての考え方や哲学について述べたものだ。両名ともWeta Workshopのスタジオがあるニュージーランドのウェリントンに在住しており、CGスタジオが出目の同社がベテランのゲームデザイナーをしっかりと雇用している点に驚かされた。

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△Magic Leapのジェームズ・エベット氏。

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△Magic Leapのジミー・バイアード氏。

ハイアード氏によると、「同社では25名の社員が所属し、うち4人がゲームデザイナーで、全員で同じゲームを開発している」という。どちらも『Dr. Grordbort’s Invaders』の開発を担当しているとみてよいだろう。何より、こうした先進的なVR/MRタイトルがこの地域にあり、開発の知見が共有されているという点がポイントだ。オーストラリア・ニュージーランドのVR開発者コミュニティが集約するメルボルンは、世界的に見ても重要な地域のひとつに数えられるだろう。そうした思いを強くした今回の取材だった。

■オーストラリアのVRゲーム事情
・第1弾
【メルボルン国際ゲームウィーク】インディゲームで盛り上がるオーストラリアのゲーム産業とPAX AUS、そしてVRゲームの今
・第2弾
【メルボルン国際ゲームウィーク】徹底紹介! PAX AUSにみる最新オーストラリアゲームシーンとVRゲーム

この記事を書いた人
小野憲史(おの・けんじ)

小野憲史(おの・けんじ)

1971年生まれ。関西大学社会学部卒。「ゲーム批評」編集長などを経て2000年よりフリーのゲームジャーナリスト。国内外のゲームイベント取材、インタビュー、レビュー、コラム、講演、特別講師などを務める。主な編著に「ゲームクリエイターが知るべき97のこと(2)」など。NPO法人IGDA日本名誉理事・事務局長。
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