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ホームコラム【メルボルン国際ゲームウィーク】インディゲームで盛り上がるオーストラリアのゲーム産業とPAX AUS、そしてVRゲームの今
コラム
2016/11/09 19:14

【メルボルン国際ゲームウィーク】インディゲームで盛り上がるオーストラリアのゲーム産業とPAX AUS、そしてVRゲームの今

コアラ、カンガルー、そしてマッドマックス……。日本ではなじみの薄いオーストラリアのゲーム産業だが、インディゲームを中心に大きな盛り上がりを見せている。11月4日~6日にメルボルンで開催された【PAX AUS】でも、インディの個性的なVRゲームが数多く出展された。今回から3回にわたってオーストラリアのVRゲーム事情をレポートする。

世界で最も住みやすい街はゲームにも優しかった

英誌エコノミストの調査部門エコノミスト・インテリジェンス・ユニット(EIU)がまとめた「世界で最も住みやすい都市」のランキングで、6年連続で1位を獲得したメルボルン。オーストラリア南東部にある第2の都市だ。市の中心部にはイギリス風の建築物が建ち並び、トラムが網の目のように走り、多くの外国人観光客の姿が見られる。

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△セントポールズ大聖堂

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△メルボルン・コンベンション&エキシビジョンセンターからヤラ川を望む

この街のもうひとつの顔が世界でも有数のゲーム産業クラスターという点だ。その象徴ともいえるのが、ハロウィン前後に開催される【メルボルン国際ゲームウィーク】で、毎年ゲーム開発者会議のGCAP(Game Connect Asia Pacific)とゲーム見本市のPAX AUS(Australia)を筆頭に、数々の関連イベントが開催されている。

メルボルン国際ゲームウィーク2016 主要イベント

10月31日 Unite Melbourne 開発者会議
11月1日~2日 GCAP 開発者会議
11月2日 Australian Game Developers Award 開発者向けアワード
11月3日 Game Changer 一般向けVRイベント
11月3日 GREE Melbourne Opening Event 関係者向けパーティ
11月4日~6日 PAX AUS 一般向け展示会
11月4日 No Arcade ローカルコミュニティイベント

 
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△GCAP2016

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△PAX AUS 2016

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△Australian Game Developers Award 2016

2008年で分断されたオーストラリアのゲーム産業

メルボルンでこのようにゲーム関連イベントが実施されるのは、地元ビクトリア州の産業振興政策の存在が大きい。特にスタートアップに関する支援策が手厚く、多くのインディ(独立系)ディベロッパーがメルボルンから登場している。中でも2015年にモバイル向けにリリースされた『Crossy Road』は大ヒット作となり、全世界をあっと言わせた。

オーストラリア産のヒットゲーム
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△Flight Control(Firemint、メルボルン)

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△フルーツ忍者(HALFBRICK、ブリスベン)

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△Real Racing3 (Firemonkeys Studio、メルボルン)

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△Crossy Road(Hipster Whale、メルボルン)

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△Anchichamber(Alexander Bruce、メルボルン)

人口が約2,313万人で、ゲーム市場規模が台湾と同規模のオーストラリアでは、1980年代から独自のゲーム産業が花開いていた。元々イギリス領だったこともあり、テレビの受信形式も欧州で主流のPALを採用していたこと。一方で地理的にアメリカとの結び付きが強いことから、オーストラリアのゲーム産業には両者の複雑な影響がみられる。

1980年代初頭には、早くもZXスペクトラムやコモドール64向けにゲーム開発を行うソフトハウスが登場した。中でもBeam Softwareが開発したアドベンチャーゲーム『The Hobbit』は、当時テキストアドベンチャーが中心だった中で、いち早くカラーグラフィックを採用。一時はイギリスのPCゲーム市場を席巻し、日本でもMSX版が発売された。
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△初期オーストラリア産PCゲーム(講演「Australian History: Bad Boys & Brawlers – The NES Downunder」スライドより)

1990年代にはプレイステーション、セガサターンの普及で家庭用ゲーム向けの受託開発が本格的に始まった。一方でEA、THQ、インフォグラム、2K Gamesなど欧米大手による地元スタジオの買収も進み、産業規模が拡大。『Bioshock』(2Kボストン)をはじめ、地元スタジオによるAAAゲーム開発が大ヒットを記録するようになった。

しかし、2008年のリーマンショックで海外大手が一斉に撤退した結果、オーストラリアのゲーム産業は壊滅的な打撃を受ける。その一方でApp StoreとGooglePlayがスタートし、モバイルゲーム市場が世界規模で拡大した結果、多くのベテランゲーム開発者がインディゲームで再スタートを切った。ここからヒット作が続々と生まれてきたのだ。

このようにオーストラリアのインディゲーム開発は、ベテランの高い技術力と若手のユニークなアイディアが巧みにブレンドしている。多くのゲーム開発者はPC向けの売りきりゲームを指向しているが、ヒット率が高いのはモバイルゲームだ。GREE Melbourneをはじめ、インディ以外のゲームスタジオも数多く存在している。

ビクトリア州政府による産業支援政策

こうした状況を見て、いち早く産業支援に乗り出したのがビクトリア州だ。オーストラリアはカナダに似た連邦国家で、日本より各州の自治権が大きく、独自の産業政策がとられている。その中核が政府の外郭組織であるCreative Victoriaで、インキュベーション施設や海外イベントへの出展補助、シードマネー提供などさまざまな施策を行っている。

また2013年にはアメリカ発祥のゲーム展示会【PAX】を、州政府の強力なあと押しもあり、海外で初めて誘致に成功した。2014年には非営利団体が運営するインディゲーム開発者向けのコワーキングスペース「The Arcade」が開設。今年で11回目を迎えるGCAPと共に、ゲーム開発者コミュニティの中核を担っている。

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△ビクトリア州政府公式サイト 
http://www.invest.vic.gov.au/jp/opportunities/information-and-communication-technology-ict/digital-games

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△The Arcade

こうした支援策により、メルボルンはオーストラリアだけでなく、隣国ニュージーランドのゲーム開発者にとっても、大きな魅力となっている。ニュージーランドは映画『ロードオブザリング』シリーズでVFXを手がけたWeta Digitalをはじめ、エンタテイメントCG分野で産業クラスターを形成した。その背景にあるのが強力な産業支援政策だ。

一方でゲーム産業の支援策は後塵を拝しており、これがニュージーランドのゲーム開発者にとって不満の種だ。同様にオーストラリアにはブリスベン・シドニー・キャンベラ・アデレード・タスマニア・パースの主要都市でゲーム開発が行われているが、産業支援の有無によりメルボルンの一極集中化が進んでいる。

インディで盛り上がるPAX AUS

これらの象徴ともいえるのがPAX AUSに設置されたインディゲームの出展コーナー「PAX RISING」だ。年々規模が拡大しており、今年はエキスポフロアの6分の1を締めるほどに成長。任天堂など大手パブリッシャーのブースをスペース面では圧倒しており、出展者も97ブースにのぼった。また、そのうち27本がメルボルンで開発されたゲームだった。

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△PAX AUSのインディコーナー「PAX RISING」

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△個々のブーススペースは東京ゲームショウより格段に広い

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△大手ゲームとはひと味違うゲームをもとめて、多くのユーザーがつめかけた

インディゲームの盛り上がりはVRゲームにも大きな影響を与える。VR市場はいまだ発展途上で、大手企業は採算面からVRゲームの発売におよび腰だ。ここに果敢に挑んでいるのがインディだからだ。会場でも入手のしやすさから、HTC Viveを中心に10作品以上が試遊展示されていた。どれも非常にユニークなものばかりで、終始にぎわっていた。

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△VR格闘ゲーム『VFC』(L&L Technologies)

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△荒廃した大地を再生させるパズルゲーム『Symphony of the Machine』(Stirfire Studios)

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△潜水艇で遺跡探索『The Depth VR』 (Digital Confectioners )

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△暗闇の世界をステッキで浮かび上がらせながら探索する『BLIND』(Surprise Attack Games+Tiny Bull Studios)

PAX AUSは3日間で5万人の集客を数え、東京ゲームショウの27万人に比べると、5分の1程度の規模感だ。E3やGamescomと違い、家庭用ゲームの出展で新規発表もない。その一方でインディゲームの出展は充実しており、まさにインディの宝庫という印象を受けた。第2回では個々のVRゲームの紹介、第3回はGCAPの模様などをレポートする。

■オーストラリアのVRゲーム事情
・第2弾
【メルボルン国際ゲームウィーク】徹底紹介! PAX AUSにみる最新オーストラリアゲームシーンとVRゲーム

この記事を書いた人
小野憲史(おの・けんじ)

小野憲史(おの・けんじ)

1971年生まれ。関西大学社会学部卒。「ゲーム批評」編集長などを経て2000年よりフリーのゲームジャーナリスト。国内外のゲームイベント取材、インタビュー、レビュー、コラム、講演、特別講師などを務める。主な編著に「ゲームクリエイターが知るべき97のこと(2)」など。NPO法人IGDA日本名誉理事・事務局長。
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